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山内和也「アク・ベシム遺跡のキリスト教寺院跡の調査」

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先月のシルクロード学研究会について少しレポートを。山梨にある帝京大学文化財研究所で行われました。
前日はキルギスアク・ベシム遺跡の調査やチュー渓谷西部の考古学踏査、モンゴル国ハンザト遺跡についての発表だったのですが、この日のテーマは「シルクロードを東へ向かったキリスト教」。発表4つと講演が1つで、どれも聞き逃せない内容でした。
最初の山内和也(帝京大学文化財研究所)「アク・ベシム遺跡のキリスト教寺院跡の調査」は、先行研究のG.L.セミョーノフによるキリスト教会(AKB-8)調査報告(論文出版は2002年)に基づき、同地のキリスト教会址および宗教関連施設について考察し、今後の課題を提示するものでした。
中央アジアにあるキルギス共和国に位置するアク・ベシム遺跡では、東方キリスト教会に関連する3つの遺構が確認されています。1953~54年にクズラソフによって調査されたAKB-3とAKB-4、かつてスイヤブと呼ばれていたアク・ベシム遺跡第一シャフリスタンの南東隅で発見されたAKB-8(セミョーノフが調査)です。
それぞれ発掘者によって、AKB-3は「キリスト教徒墓地」で7~10世紀、AKB-4は「キリスト教会およびキリスト教徒墓地」で8~9世紀、AKB-8は「キリスト教会」で10~11世紀のものだろうと推測されています。
AKB-8は単体の建物遺構ではなくて、56m×42m(外壁の厚さを除く)の複合遺構で、3ないし4つの部分から成っています。複合体をそれぞれA~Dとすると、複合体Aは正方形と長方形の部屋と、それらを三方から取り囲むヴォールト天井を持つ一連の部屋から構成されています。
その北側に位置する複合体Bは正方形の部屋で、通路に囲まれており、通路が中庭に面しています。そのまた北側にある複合体Cも正方形の部屋で、通路で小中庭に面してます。その北側に独立した部屋が3つほどあり、これを複合体Dと呼んでいます。
注目されるのは複合体A、B、Cの正方形の部屋で、いずれも建物の東側に配され、部屋の床より一段高くなった祭壇が築かれていることからここが礼拝堂であったのではないかと考えられています。複合体Aの正方形の部屋からは、銘文を伴う壁画の断片が見つかっており、複合体Cの正方形の部屋の床には十字架が描かれて、いくつかの史料(東方キリスト教で使用された十字架がスタンプされたもの等)が発見されています。
複合体Aの東側部分では、ワインの醸造・貯蔵に関連すると推定される部屋が見つかっています。複合体Bを構成する部屋の壁龕の基礎からは人骨が発見されており、参籠(聖人の墓所または聖遺物の上に設けられた部屋で一晩過ごすと病気が癒される)の伝統との関連が指摘されています。
また複合体Bからはソグド語が記された羊皮紙の書物断片が出土しています。
セミョーノフは、出土したコインや壁龕断片の模様からAKB-8の年代を10~11世紀としましたが、実は複合体Aからは多くの獣骨と多量の土器破片も見つかっています。これは建物が教会として使われなくなった後、教会とは関係ない人たちが居住し、簡易的な炉を作っていた可能性を意味します。なので出土したコイン等から10~11世紀とするのは再考を要すると山内氏は述べていました。
アク・ベシム遺跡にはキリスト教関連だけでなく、仏教に関連する遺跡(AKB-0、AKB-1、AKB-18)があり、ゾロアスター教の臓骨器(オスアリ)、マニ教の「沈黙の塔」ではないかとされる遺構(AKB-5)があります。
ただ一方で、住民の多くが信奉していたであろうゾロアスター教の神殿や、10世紀以降この地域の支配的な宗教となったと考えられるイスラム教のモスクや墓はこれまで発見されていません。
また諸宗教に関連する施設は基本的に第一シャフリスタンの外側に位置しているのに、AKB-8だけが第一シャフリスタン南東隅の周壁の内側に位置しているのが不可解です。
これらを考え合わせて山内氏は、外来の宗教は基本的にシャフリスタンの外側に位置すべきだが、AKB-8は例外的に内側に設けられたという仮説を立てていました。
紀元後781年頃に書かれたティモテ(ティモシー、ティモテ1世とも)の書簡には、テュルク人の王の改宗について記されているのですが、このテュルク人の王がスイヤブ(アク・ベシム)の周辺を支配していた王で、王の命令によって例外的に街の中に教会が建てられたのではないかというものです。
その場合、セミョーノフのいう10~11世紀という年代では合わないので、やはりAKB-8の、教会として使用された時期の特定が必要となってくるのだろうと思います。
報道でもあったように、帝京大学シルクロード学術調査団は、2020年からキルギス共和国国立科学アカデミーと共同でキリスト教会址(AKB-8)の発掘調査をすることになりました。既に建物群北側はカザフスタンのNGOが地中レーダー探査を行っているとのこと。
これまでの調査結果を踏まえ、更なる発掘調査によって東に伝わったキリスト教会の全貌が明らかになることを願います。このような調査に日本の研究機関が関わることで成果をいち早く知ることができるようになるのはうれしいことですね。
情報があまり伝わってこないために、東方キリスト教会についてはまだまだ解明されていないイメージだったのですが、発掘調査でこんなにも明らかにされていることがあるのだと知りました。
またテクノロジーだけでなく、政治的な安定もないと調査チームが入れないという現実的な問題があり、今回このように調査できるようになったのは平和のおかげなのだと感じました☆(続きは明日以降に…

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