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目黒区美術館「村上友晴展」

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目黒区美術館で開かれている村上友晴展に行って来ました。村上友晴1938)は日本を代表する現代画家で、カトリック信者。今も目黒区に住んで創作活動をしており、こちらの美術館にも作品が収蔵されています。

 

今展覧会には19632018年(出来立てやん!)までの作品が展示されており見応えあり。ただしモノトーンの「無題」の作品が35作のうち26作にもなる、かなーり抽象度高めのラインナップで、絵の好きな人向けかもしれません。

 

村上友晴福島県三春町に生まれ、少年期は東京上野界隈に住み、東京国立博物館などで日本の美に触れながら育ちました。東京芸術大学に進んで日本画を学びましたが、卒業後訪れたニューヨークで現代美術に出合って衝撃を受け、1964年から10年間は創作を中断します。

 

キリスト教に触れたのはちょうどこの頃のことで、模索する日々を経て、1974年沈黙を破って制作開始。1977年、39歳の時カトリック神田教会で洗礼を受けました。その時から現在まで大きくは変わっていない制作方法は、ドライポイント(銅版画技法の一種で、ニードルを使って銅版に線を刻)によるもので、村上の場合はその上から再びニードルで削り、紙を毛羽立てるなどしています。一つの作品の中で油彩と炭(墨でなく炭@@)、鉛筆、アクリルなどを組み合わせて使っていることも特徴でしょうか。

 

私が目を引かれたのは、2階展示室Bに並んでいた「十字架の道」の連作(14枚)と「ICON」。「十字架の道」はよく「十字架の道行」とも呼ばれるもので、イエス様の生涯のうちゲッセマネの園から復活までを14枚の絵にしたもの。前半7枚が向かって右から順番に掛けられており、「ICON」を真ん中にして、後半7枚が左側に掛けられています。これはカトリック教会内に「十字架の道行」が掲げられている時と同じ並び順。つまりこれは空間を礼拝堂に模した作品で、その意味で真ん中にある「ICON」は祭壇画ですね。

 

色合いは、「ICON」が真っ黒、「十字架の道」が一見真っ白です。しかしよく見ると、白い紙の中央に小さな四角形がドライポイントで形作られており、そこだけ細かいニードルで紙を毛羽立たせています。素人目には、23が入れ替わっても、私なんかだと全体をシャッフルしても気付かないほど、14枚はどれも同じ感じ。

 

一瞬「なんのこっちゃ」と思いましたが、イエス様がここで鞭打たれたんだなとか、十字架を背負われたんだなとか思い起こしながら進んでいってみると、目に映る光景は変わらないのに、自分の頭の中にはイメージが湧いてきます。祭壇画の「ICON」の真っ黒さを覗くと、そこに宇宙があるように感じられました。そして自分の中の小宇宙と呼応して、対話が始まるような。

 

連作のラスト、「十字架の道行」で言えば「キリストは、光のうちに復活される」まで見終わると、白でも黒でもないものが浮かんできます。それは・・・光でしょうか。絵はそれを感じさせるための「装置」だったのかもと思いました。目で見て認識するのとは異なり、見ている者の内に像(イメージ)が想起されることによって完成する、芸術的な「装置」ではないかと。

 

感想は鑑賞する人によって違うでしょうね。プロフィールによれば、御年80になられるようですが、お元気に創作を続けていっていただきたいです☆(展覧会は12/6(木)までです~。

 

 


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由愛(ゆめ)

Author:由愛(ゆめ)
キリシタン、キリスト教史、宗教史に興味あり。
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