FC2ブログ

Heaven's Cafe

キリシタンのあしあとを求めて・・・♪

Entries

加藤廣「秘録 島原の乱」

s-siko04h769.jpg

加藤廣「秘録 島原の乱」読みました。74歳の時「信長の棺」で遅咲きデビューして以来、歴史小説界でトップを走ってきたレジェンド加藤廣の遺作がキリシタン物だと知り、読まないでいられようかということで。本を開けば、第一章から抑制の利いた文章で滑り出し、馥郁たる歴史小説の香りが漂ってきます。いいなぁと思って、一章二章・・・。

しかし三章から少し拙速な文章運びになってきて、徐々に無視できない程度に。これがあの加藤廣の書いたものだろうかと訝しく思ってしまうくらい、ストーリー展開や背景の説明が雑になってきます。やがて、ぶっちゃけトークのような筆致になり、結論ありきの意見をそのまま書いてしまうし、筆者がこう考えているということをそのまま書いてしまうしで、「急いでいたのかな」と感じました。

巻末の解説によると、筆者は病気をおして、小説雑誌に休み休み連載していったのだとか。書くのも難しい時期がそれほど続いていたということですね。今年の4月に87歳で亡くなったけれど、今まで楽しませてもらったことを感謝しなければならないのかも。

筆者のそのような状況をフォローするため、剣術と時代考証に関しては、それぞれの専門家が見て仕上げたのだと解説されていました。しかし・・・、剣術に関してはよく分からないので意見が言えませんが、キリシタンに関しては少々間違っていると指摘しない訳にはいきません。時代考証した人(解説には名前が載っている)は、うちの近くで小説家になる方法を教えている作家さんで、ミステリー小説の書き方を指南していたかと思います。

もちろん歴史にも大変詳しいから出版社の方から依頼がいったのだと思いますが、キリスト教については教養レベルの知識で時代考証したのかなと思いました。例えば、小説内でキリシタンたちが普通に聖書を出してきて読んで、「マタイによる福音書ではこう書かれていて・・・」と聖書のパラグラフを引用をするのですが、当時のキリシタンが読んでいたのは要理書と聖人伝くらいで、「聖書」や「マタイによる福音書」という訳語もありませんでした。

もちろん小説ですし、エンターテインメントですし、現代に合わせてわざとこう書いているのかもしれません。しかしこれだけではないので、やっぱりキリスト教やキリシタンにもう少し造詣の深い人に時代考証してもらえば良かったのではないかと思ってしまいます。加藤廣の作品なら、多くのファンが読むでしょうから。

最後まで読むと、「天草四郎の首が誰のものか」という点に加藤廣の着想があり、それを書きたかったのだと分かります。だけどラストのシーンで出てくる赤ちゃんの存在が、それまでに描かれた人物像や人間関係と矛盾していて、謎というより蛇足の感を拭えません。

辛口の意見を書きましたが、「ああ、加藤廣は逝ってしまったんだな」としみじみ思ったのでこう書いてしまったのだと思います。大体、後期高齢者になるくらいの年で小説家になり、次々に面白い作品を世に出してセンセーションを巻き起こしたこと自体、今も私にとってはレジェンドです。今までどうもありがとう!と言うべきですね。どうか・・・加藤廣に来ていた言霊があるなら、誰かのところに行って活躍してほしいと、ご冥福と共にお祈りしたいと思います。


関連記事
スポンサーサイト

Comment

Comment_form

管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

左サイドMenu

プロフィール

由愛(ゆめ)

Author:由愛(ゆめ)
キリシタンのあしあとを求めて旅するサイト『天上の青』の管理人をしています☆

twitter

最新記事

ブログカウンター

最新トラックバック