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中園成生「かくれキリシタンの起源~信仰と信者の実相」

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中園成生「かくれキリシタンの起源~信仰と信者の実相」読みました。著者は平戸市生月島博物館・島の館学芸員で、捕鯨史やかくれキリシタン信仰の調査・研究に取り組んできた人。かくれキリシタン関係の著作は他にもありますが、本書は「決定版」とも言うべき一冊だと思います。

当然ながら、かくれキリシタンの信仰形態に関しては他には見られないほど詳述されており、今後もこれ以上のことは解明されてこないと思われます。なぜなら昭和初期にかくれキリシタン研究が始まった頃は、かくれの人たちが2万人いたのですが、今ではその伝統を守っているのが400人ほどとなり、伝承が難しくなっているからです。平戸や長崎だけでなく、福岡の今村や大阪の千提寺まで調査されているのも貴重です。

著者が本書で主張している根幹は、そういった信者の実相を通して、「かくれキリシタンは、信仰が変容したのではなく、当時のキリシタン信仰をそのまま守ったのだ」ということと、「従来言われてきたように、経済的に非常に貧しかったわけではない」ということ。それを言わんがために本書を認めたのではないかと感じられました。

信仰変容説と信徒の貧困が誤解に基づくものだという内容は、読めばなるほどと思って読むものの、自分が今まで持っていた認識を変えることなので、ちょっと時間がかかる感じ。この二つが否定されると、従来のかくれキリシタンのイメージは随分と変わりますね。迫害における信徒の心情も「キリシタンであると露見して殉教しなければいけなければやむなく死ぬとしても、基本的には信仰継承のために生きることが推奨された」というものだったとは、にわかには飲み込めないものがあり。しかし新しい視座が与えられたことで、より見えてくることもあるかと思うので、納得する部分を納得し、今後の研究もまた追いたいと思います。

さて本書で一番私が「使える!」と思ったのは、かくれキリシタンやキリシタンの遺物に関するところ。キリシタン遺物は、著者自身が研究する際に最も気を遣った点の一つだったのでしょう。それだからこそ、とても深化した洞察が見られ、区分の仕方も合理的。この線引き、基準の出し方はエクセレントだと思いました。

曰く、「見慣れない形状や特定の記号や文字が存在する造形物を、キリシタン信仰に関する資史料や現存するかくれキリシタン信仰の要素に拠って検証を行うのではなく、近現代の人々が専ら個人的主観に拠ってキリスト教と関連付け、キリシタンやかくれキリシタン信仰に伴う資料だとした上で、その物の存在を主な根拠として、かつてかくれキリシタンが存在したという結論を導き出している現象(がある)」と。

ほんと、その通りなんです。この前行って来た群馬とかも、かくれキリシタン研究家が勝手に十字模様を見つけ、それをキリシタンの墓だと認定し、だからその村はかくれキリシタンの村だと主張して、それを地元観光協会も喜んで観光マップにでかでかと明記してしまうという、大混乱を巻き起こしているんです。

著者は各地のキリシタン資料館にキリシタン遺物として虚構の遺物が多数展示されていること、展示物の大半が虚構の遺物であることもあると言っているのですが、それも私は全く同意見。しかもすんごい主張してくるんです、「本物だ。偽物のはずがない」と。こういった虚構のキリシタン遺物が一掃されることが、今や私の願いの一つになってしまいました、、、

その意味ではほんとに、ゾノー(中園氏のこと)ありがとーーーー!!!って感じです。
願わくばこういった正しい研究とそれによってもたらされた知識が、日本に波及していかんことを。「キリシタン遺物」だと言ってアヤシイ物を認定している資料館や人にこの本送ってあげたいくらいですけどね。(受け入れないかもしれないけど・・・

いろんな所を回ってキリシタン遺物を探している方々には、本書のp415-433を読んでいただきたいです。是非是非是非(*'ω'*)


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Comment

感謝です 

由愛さまの楽しい書評、いつも楽しみです。中園氏のこの本、実は購入をためらっていました。ちょうど同時期、先に購入したかくれキリシタン研究書でスッキリしない気持ちでした。読んでみます。
  • posted by 庫良 
  • URL 
  • 2018.06/05 19:09分 
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良かったら~^^ 

良かったら読んでみてくださいませ。世界遺産登録の勧告が出てから、キリシタンはブームに拍車がかかっていますね。いい本が出されるといいんですけど(o^^o)
  • posted by 由愛 
  • URL 
  • 2018.06/06 05:23分 
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この本、ご存知でしょうか 

広野真嗣『消された信仰「最後のかくれキリシタン」―長崎・生月島の人々』小学館。つい最近刊行された本です。既にご存知でしたら、ごめんなさい。
前にお奨めした『守教』、実は有名な大間違いがありますが書き忘れました。ファチマの祈りが江戸初期のロザリオの祈りに入っています~。とはいえ、著者のあたたかい人柄を感じて責める気持ちにはなれません。そして以前お伝えした鞆の浦・福善寺のキリシタン遺物の写真(白黒)が松田重雄『切支丹灯籠の信仰』恒文社、中表紙のトップを飾っていますのでご覧くださいませ。
  • posted by 庫良 
  • URL 
  • 2018.06/12 23:08分 
  • [Edit]

同感です 

私もその点「あれ?」と思いました(^_^;)
でもこんなに立派な作家さんが今村のキリシタンのこと書いてくれているのは感謝だなと思いました。信仰的に描いてくれていますしね。福善寺の写真見ました~☆
  • posted by 由愛 
  • URL 
  • 2018.06/18 12:35分 
  • [Edit]

広野真嗣『消された信仰「最後のかくれキリシタン」―長崎・生月島の人々』 

広野真嗣『消された信仰「最後のかくれキリシタン」―長崎・生月島の人々』も読んでみます~(*´▽`*)
  • posted by 由愛 
  • URL 
  • 2018.06/26 11:48分 
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